現在、いくつかの都市がIR誘致を公式に表明してその動向が注目されています。
中でも、大阪はIR推進法が成立して間もない2017年から誘致を表明をしており、準備をいち早く進めているため日本の最有力候補地となっています。
今回は大阪IRについて、概要や魅力、参入企業などの情報をご紹介します。
Contents
大阪におけるIRの基本方針
大阪市の公表しているIR構想および最新ニュースより、以下の内容が示されています。
- 基本コンセプト:「世界最高水準の成長型IR」
- 場所:夢洲(ゆめしま)
- 時期:2025年
- 企業:MGMとオリックスの共同チーム
これが大阪IRの超キホン事項となります。
少し詳しく解説します。
「世界最高水準の成長型IR」が基本コンセプト
「世界最高水準の成長型IR」というのはとても壮大に聞こえますが、具体的にはどのようなものを目指すのでしょうか。
大阪市のIR構想をまとめると、次の5つのポイントが見えてきます。
- 世界最高水準のIRにするために
①世界水準のMICE施設を整備
②大阪・関西・日本ならではのコンテンツを創造・発信
③エンターテインメント&リゾートの拠点を開発 - 成長型IRにするために
④日本各地へ送客できるゲートウェイ機能を形成
⑤世界水準の規模と質を兼ね備えた宿泊施設を整備
※MICEとは大規模会議施設のことで、国際会議や展示会などの利用を想定しています。
このように、ビジネス利用や観光の拠点として末長く外国人観光客に愛用してもらえるようなIRにしたいと考えているようです。
カジノはあくまでもエンターテインメントの1つという位置付けのようですね。
夢洲(ゆめしま)が大阪IRの舞台
皆さんは夢洲をご存知ですか?1990年代につくられた大阪湾に浮かぶ人口島です。
バブル期につくられ、一時期は用途がなく負の遺産とまで言われましたが、2025年の万博開催地・大阪IRの開業地として選定され一躍脚光を浴びています。
IRの敷地面積は約49ヘクタールで、なんど東京ドーム10個分以上の広さです!
エンターテインメントや宿泊施設などを建てた場合の総延床面積は100万㎡にもなると言われています。
2024年開業を目指す
これだけの大規模開発になると、気になるのはいつ開業になるのかということです。
現時点では最速で2024年の開業を目指しています。
これは、2025年の大阪万博開催の前に開業したいという狙いがあるためです。
大阪万博で最新のテクノロジーに触れ、IRのMICE施設で国際会議を行い、夜はショーやカジノを楽しむ。とても理想的なプランですよね!
実現すれば大阪の名が世界中に浸透することになりそうです。
MGMとオリックスの共同チームが開発
大阪IRでは2020年2月に開発企業の公募が行われ、1社のみがこれに応募する結果となりました。これで事実上、開発企業が確定したことになります。
その応募者とは、MGMリゾーツとオリックスの共同チームです。正式には「大阪オンリー」パートナーシップと表明されています。
もともとMGMリゾーツは、ラスベガスなどでIRを運営している超有名企業です。この1社だけでも大阪IRの担い手として最有力と目されていました。
ここに、大阪という地に強力なネットワークを持つオリックスが加わることで最強のコンビが完成したことになります。
それぞれの強みは次の通りです。
- MGMリゾーツ:IR開発・運営に強み
- オリックス:大阪・関西の不動産&企業ネットワークに強み
今回大阪IRへの応募企業は1社のみでしたが、その理由の1つはこの共同チームがあまりに強すぎて勝ち目が薄かったためと言われています。
大阪の地でどのようなエンターテインメントを創造・発信してくれるのか、今から楽しみです!
IR候補地としての大阪の魅力
大阪で統合型リゾートを開業することの魅力は一体どこにあるのでしょうか。
主なものをピックアップすると以下4つになります。
- 豊富な観光資源
- 大阪万博との相乗効果
- 夢洲という広大な土地
- 既存の産業クラスター
それぞれ見てみましょう。
豊富な観光資源
大阪IRの魅力の1つはその観光資源の多さでしょう。京都の文化遺産や大阪の道頓堀、少し足を伸ばせば和歌山の熊野古道など、数多くの人気スポットが周辺に散りばめられています。
特に京都の清水寺や金閣寺などは、外国人観光客から絶大な人気を誇ります。京都市への外国人観光客の流入は年間5,000万人を超えるほどです。
大阪IRが拠点となり、これら関西の観光地への送客効果が期待されています。
大阪万博との相乗効果
大阪万博の存在も無視できません。大阪IRの開業と時を同じくして2025年に大阪万博が夢洲で開催されます。
世界中から約2,800万人もの人々集まり、その経済効果は約2兆円とも言われています。
世界最先端の技術や文化の博覧会なので、その注目度は高く大阪・夢洲の名前が世界中に知られるチャンスにもなります。
当然ながら、隣接する大阪IRのホテルに宿泊し、エンターテインメントショーを楽しんだり国際的な会議が行われることになるでしょう。
このように、大阪IRは2025年の大阪万博との相乗効果が見込まれ、華々しいスタートを飾れると考えられています。
夢洲という広大な土地
夢洲という広大なIR用地も大阪IRの大きな強みです。
およそ49ヘクタール、東京ドーム10個分以上の敷地は、世界最高水準の施設を建設するのに十分な広さとなります。
海外の主要な統合型リゾートの例を見ると、以下の4つの要素が必ず施設に組み込まれています。
- 大型ホテル施設
- 大型ショッピングモール施設
- 複数のエンターテインメント施設(スタジアムや劇場、映画館など)
- MICE施設(国際会議場・展示施設など)
夢洲はこれらを全て完備することが可能で、シンガポールのマリーナベイサンズなどに匹敵する世界有数のリゾート空間を実現できると言われています。
既存の産業クラスター
大阪では、様々な産業分野の企業や学術機関が揃っています。これらの産業クラスターは、大阪IRのMICE施設における国際会議や展示会の開催を後押してくれるでしょう。
また、2020年代を代表するビジネス分野であるライフサイエンスについても産業クラスターを形成しています。
こうした成長が見込まれる産業クラスターは他にもあり、ビジネスシーンにおける大阪IRの活用に期待が寄せられています。
IR誘致に向けた大阪の課題
大阪IRの最大の課題は開業までのタイトなスケジュールです。
2024年の開業は本当に可能なのか、大阪万博の開催される2025年までには最低でも開業できるのか。こういった点が課題として挙げられています。
特に、夢洲はバブル期の1990年代に建設されて以降ほとんど開発が進んでいない土地でした。2020年現在、鉄道はおろか歩いて渡る橋もない状況ですので、インフラの整備が急務となっています。
具体的には次の2つのインフラ整備が必要不可欠です。
- 交通インフラ
- 防災インフラ
1つ目の交通インフラについては、都心や関西国際空港と接続する高速道路の整備、大型客船を受け入れる海上交通、下図のような鉄道交通および駅ビルの整備が検討されています。
防災についても、夢洲は人口島であるため何もしないと災害時のリスクが高い状態です。地震や津波などに対する安全性を確保し、防災インフラを整えることも重要なのです。
【直近の状況】じきに求人募集も開始か
大阪IRの直近の状況としては、MGM・オリックスの共同チーム1社のみが運営企業として応募し、事実上選定が決まったことが挙げられます。
IRの運営については、ラスベガスでの実績があるMGMリゾーツが主導していくものと思われます。
これにより、今後MGMリゾーツジャパンによる求人情報も出てくるのではないかと予想されます。
IR企業の職種は多岐に渡り、例えば以下のようなものがあります。
- カジノディーラー
- ホテルマン・ホテルウーマン
- アーティスト
- ダンサー
- MICE施設スタッフ
さらに、給与体系も日本の大企業を凌ぐ高待遇であることが予想されます。
例えば、アメリカの就職情報サイトGlassdoorに掲載されているMGM・リゾーツと同じ外資系IR運営企業における収入の情報は以下になります。
- エグゼクティブマネージャー:年収約1,500万円
- シフトマネージャー:年収約630万円
- ディーラー:年収約430万円
ディーラーは時給制なので、チップ込みで年収ベースに換算しています。参考までに、エグゼクティブマネージャーの収入情報は以下になります。
働き手の視点で見ても、大阪IRは非常に魅力的な場所だと言えそうですね!
なお、ここでご紹介した職種はほんの一例です。
イギリスのオックスフォード・エコノミクスの調査によると、大阪IRが実現した際は直接雇用で26,000人、間接雇用で51,500人もの雇用効果が見込まれると発表されています。
今回の参入企業決定を受けて、統合型リゾートという新たな業界で活躍する人が増えていくことでしょう。
まとめ
大阪IRについてその基本から魅力まで解説いたしました。
あらためてポイントをまとめます。
- 基本コンセプト:世界最高水準の成長型IR
- 場所:夢洲(ゆめしま)
- 時期:2024年の開業
- 魅力:観光資源・万博との相乗効果・広大な用地・産業クラスター
- 課題:開業までのタイトなスケジュール
- 運営企業:MGMとオリックスの共同チーム
大阪IRは日本のIR候補地の中でも規模と予算が最大級となっています。
自動運転車やAR投影など、未来を先取りするような先進技術がふんだんに散りばめられたリゾート空間になりそうです。今からワクワクが止まりません!
今後も大阪IRの動向は要チェックです。
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